皆さんこんにちは。作業療法士という職業を聞いたときにどのようなことを思い浮かべますか?作業とは食べたり、お風呂に入ったり、トイレに行ったり、人の日常生活に関わる全ての活動のことを言います。
何気なく行っているすべての活動が病気や怪我でできなくなってしまったときこそ作業療法士の出番です。実際の例を挙げて説明したいと思います。
今までトイレで排泄できていたAさん。
手術により、人工肛門※を付けることになりました。人工肛門の管理には細かい指の動きが必要です。しかし、Aさんは「これ(人工肛門)いつとれるんや?」と身体の変化に関心がない様子で入院されてきました。入院前から指の細かい動きがしづらく、便を排出する際のつまみ動作や丸める動作に介助が必要な状態でした。また、なにをするにもやる気が起こらず、ベッドに寝ている時間が多くなっていました。
そこで作業療法士は、つまむ動作、丸める動作の練習をするため、同じ動作が必要となる「ペーパークイリング」という作業を提供しました。
ペーパークイリングとは、細い紙をお箸などに巻き付けて作る簡単なペーパーアートのことです。紙をくるくると巻き付けるだけで簡単に出来上がる作品です。「自分にもできることがある」と自信がついたAさん。徐々に自分の身体に関心をもつようになりました。
最終的には、作業活動を通して、細かな指の動きができるようになり、人工肛門の取り扱いも可能になりました。また、簡単にできる作品なので、リハビリ以外の時間でも自らすすんで制作する姿がみられ、起きている時間も増えました。
このように作業療法士は、患者様の退院後の生活を想定し、必要となる能力を手に入れるために、様々な作業活動を提供しています。
※人工肛門:病気により腸を切除した人が、手術により腹部にパウチという便を貯める袋を装着し、便の新しい出口を作り排便の機能を補うもの。